展覧会感想

西洋美術を中心に展覧会の感想を書いています。

ミュシャ展 2017年3月25日

会期

 2017年3月8日~6月5日

会場

 国立新美術館

感想

 週末は混んでるだろうな、でも会期後半になると余計混むだろうから今のうちに、と覚悟して行きました。入場待ちはなく、同時開催されていた「草間彌生展」のほうが行列ができていましたね。展示は「スラブ叙事詩」20点とそれ以外の作品80点の2部構成ですが、見所は何と言ってもチェコ以外では世界で初めて全作品が揃って展示された「スラブ叙事詩」でしょう。「66歳になるまでムハは日々、長ければ10時間、6メートルの高さにある足場に上り、カンヴァスの隅々まで筆を走らせた(図録P24)」そうですが、とにかく巨大で、これを20枚も制作する労苦がすごいし、その労苦を厭わないミュシャの母国への情熱に圧倒されました。主題も先史時代から20世紀までのスラブ民族の歴史という壮大さ。4つの顔を持つ多神教の神スヴァントヴィートや隻眼の戦士ヤン・ジシュカ、シゲットをめぐるトルコとの激しい攻防など、私は彼の地域について初めて知ることが多く、興味をかき立てられました。まさに絵で読むスラブ民族チェコの歴史という感じです。また、「ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々」を見たときはフリードリヒの「海辺の僧侶」が脳裏を過ぎりました。一方で、衣服や装身具、建築の内装にはミュシャらしいディテールの緻密さが伺えますし、色使いも繊細で柔らかい雰囲気があります。ミュシャは「スラブ叙事詩」を描くに当たり、油彩とテンペラを併用しているため現在でも色彩が明るさを保っているのだそうです(図録P24)。この大作を見ながらモニュメンタルな大作、象徴的な内容と装飾的な画風がシャヴァンヌを思い出すな、などと考えていたら、ミュシャはシャヴァンヌと個人的な交流があったとのこと(図録P206)でした。ミュシャ展から話が逸れてしまうのですが、シャヴァンヌの名は先般見に行った「シャセリオー展」でも、あるいは昨年末の「ゴッホゴーギャン展」でも見かけていて、文化村の特別展以降、美術の流れを考える上で要になる画家の一人じゃないかとずっと気になっています。
 会場内では「スラブ叙事詩」のうち一部の作品は撮影が可能でした。上野の森美術館で開催されていた「デトロイト美術館展」も曜日限定で撮影が可能でしたが、こうした試みは今後増えていきそうですね。さて、「スラブ叙事詩」は大きな作品だったので展示室に人が多くても見ることができたのですが、馴染み深いサラ・ベルナールのポスターなど小さな作品が展示してあるコーナーのほうは、絵の前に列ができてしまっていたのでやむなく解説を読むのを諦め、後ろから眺めるにとどめました。一番混んでいたのはグッズ売り場でしょうか。お客さんがぎっしりで、商品を取るにも苦労しましたし、売り切れの商品も。「四芸術」のポストカードセット欲しかったなあ。レジが多かったこともあり、待ち時間は10分もありませんでしたが、重い荷物・大きい荷物は展示室に入る前にロッカーに預けておいたほうが楽だと思います。日本におけるミュシャの人気の高さを改めて実感しました。